人生100年時代の真実

人生100年時代という言葉を初めて聞いたとき、皆さんはどのようなことが頭に浮かびましたか?

おバカな自分は、一瞬、100歳まで生きないといけないのかあ…といったことが頭に浮かびましたが、よくよく考えてみると、日本人の平均寿命は80歳くらいですからね。

確かに100歳でご存命の方がいらっしゃるのは間違いないですし、それをもって人生100年時代と言うのも間違いではないと思います。

ただ、平均寿命が80歳ということは、その手前で亡くなる方もいらっしゃるはずで、そのあたりを考えると、人生100年時代という言葉は少し大げさなような気もします。

また、最近は貯蓄から投資へといったことが盛んに言われていて、多くの金融商品が世に出回っていますが、その売り文句の一つが、人生100年時代という言葉なのですよね。

人生100年時代という都合の良い言葉があったので商売に使っているのか、商売をするために都合の良い言葉を生み出したのか、そのあたりの事情は自分にはわかりません。

ただ、こういうときには、まず、その言葉を疑ってみることが大切ではないかと思うのですよね。

 

日本人は何歳まで生きるのか

日本人は何歳まで生きるのでしょう?

そんな疑問に答えてくれるのが、厚生労働省が毎年作成している簡易生命表という統計資料ではないかと思います。

これは、年齢別死亡率が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が一年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを表したものですが、わかりやすいように、その一部をグラフにしてみました。

特定の年齢まで生存する人の割合

特定の年齢まで生存する人の割合 (厚生労働省簡易生命表より)

このグラフを見ると、令和5年に生まれた0歳児が何歳まで生きることができるのかが、男女別にわかりますが、一目見てわかるのは、女性のほうが長生きということですね。

40歳くらいまでは男女による違いがなく、45歳くらいから男女の違いが生じ、時間の経過とともに、その違いが顕著になってきます。

そして、65歳になると、男性の10人に1人。女性の20人に1人が亡くなり、後期高齢者となる75歳では、男性の4人に1人。女性の10人に1人が亡くなるようです。

また、男性の平均寿命である81.09歳を迎えることができる男性は、だいたい5人に3人くらいで、女性の平均寿命である87.14歳を迎えることができる女性も、だいたい5人に3人くらいのようです。

そして、100歳を迎えることができる人は、男性で100人に1人くらい。女性で100人に6人くらいのようですね。

 

人生100年時代という言葉は正確なのか

これらの数値からすれば、人生100年時代とは言うものの、100歳を迎えられる人はかなりの少数派であることがわかります。

また、歳を重ねるごとに健康リスクや介護のリスクが高くなりますので、そういった点についても考えておいたほうが良さそうですよね。

健康リスクについては、健康寿命という指標。介護のリスクについては、要介護認定率という指標をもとに考えてみるのが良さそうですので、それぞれ見ておこうと思います。

まず、健康寿命ですが、これは、健康上の問題で日常生活に制限を受けることなく生活できる期間を指す指標で、厚生労働省の資料によれば、2019年の健康寿命は、男性で72.68歳、女性で75.38歳ということです。

一方、同じく2019年の平均寿命は、男性で81.41歳、女性で87.45歳ですので、単純に考えれば、男性は8.73年、女性は12.06年の不健康な期間を過ごしていることになりますね。

また、厚生労働省介護保険事業状況報告によれば、令和4年の前期高齢者(65~74歳)の要介護認定率は4.3%。後期高齢者(75歳以上)の要介護認定率は31.3%ということですので、生活に何らかの支障のある高齢者の方もある程度いらっしゃることになります。

こうした状況をどう見るかは、各人の感覚もあると思いますので、これが正解ということはないと思いますが、自分は、これで人生100年時代と言うのは少し違うのではないかと感じています。

多くの人が、明るく健康に100歳を迎えられる。そんな時代が、本当の意味での人生100年時代ではないでしょうか?