「東京に行く」「東京へ行く」
話し言葉(口語)としては「東京に行く」が一般的だと思いますし、「東京に行く」でも「東京へ行く」でも意味は通じますので、どちらを使っても良いと思うのですが、微妙な違いがないわけでもないというのが日本語の難しいところですね。
「に」は最も多くの用法を持つ格助詞
「が」「の」「を」「に」「へ」「と」「から」「より」「で」「や」の格助詞のうち、「に」は、最も多くの用法を持つと言われています。
「東京に住む」(場所)、「会社員になる」(着点)、「友人に会う」(相手)、「彼にはできない」(相手)、「音に驚く」(起因)、「東京に行く」(方向)、「見学に行く」(目的)、「11時に開店する」(時点)といった感じですね。
一方、「へ」は、「東京へ行く」(方向)、「郷里へ帰る」(目的)と、用法が限られていますが、こうしたことからすれば、用法が限られているほうの「へ」を使い、「東京へ行く」とするのが正式な表現のような気がします。
場所のあとは「へ」にすると良い
「東京に行く」でも「東京へ行く」でも意味は通じますが、「東京」といった「場所」のあとは、「へ」を使うと決めてしまうほうが良いかもしれません。
例えば、「8時に家を出て会社に行く」という場合、「8時に会社に行く」よりも「8時に会社へ行く」のほうが、「に」が重ならないので文章としては読みやすくなります。
ただ、この場合も、話し言葉としては「8時に会社に行く」でしょうね。
距離感の違いで「に」と「へ」を使い分けている
また、日本人は距離感の違いで「に」と「へ」を無意識に使い分けているそうです。
例えば、物理的な距離感の違いにより、「近くに出かけた」「遠くへ出かけた」と使い分けたり、心理的な距離感の違いにより、「同僚にメールを送信した」「上司へメールを送信した」と使い分けているようですね。
相手に対する敬意の違いによる使い分け
また、相手に対する敬意の違いから、「に」と「へ」を使い分けていることもあるようです。
例えば、「ご遺族に言葉をかける」「ご遺族へ言葉をかける」の場合、「ご遺族へ」を選択される方のほうが、やや多いということです。
やはり日本語は難しい
以上が、「に」と「へ」の使い分けに関する大雑把な話しですが、やはり日本語は難しいですね。自分も文章を書いていて、どちらを使おうか迷うことがあります。
また、何に焦点が当たっているかによって、「に」と「へ」を使い分けている方もいらっしゃるようですね。
例えば、「東京に行く」「東京へ行く」ですが、「東京」という着点(到達点)に焦点が当たっているのであれば「東京に行く」。「東京」に向かう手段や経路、方向性に焦点が当たっているのであれば「東京へ行く」という使い分けです。
こうした使い分けは、日頃から言葉の使い方や選び方を意識していないと、なかなかできないことだと思いますが、いずれにしてもすごい方だと思いました。
格助詞とは、名詞と名詞、あるいは、名刺と述語としての動詞や形容詞との意味関係を示すものですので、このように文章全体の意味を考えることが重要なのでしょう。