「味方は2人でいい。広大なる中間地帯を作れ。敵は1人でも少なくしろ」
金権政治家の代名詞的存在であり、また、巧みな人心掌握術によって人々を魅了してきた故田中角栄元総理が常々口にしていた言葉だそうです。
この言葉の直接的な意味は、「人は何か事を為そうとする時ほど、味方を増やそうとするが、そういう奴に限って敵も増やす」といったことのようですが、田中角栄氏は、自分に好意を持つ中間層を増やしておくことが大切だとも考えていたようです。
広大なる中間地帯は敵との緩衝地帯
政治家でもあり実業家でもあった田中角栄氏は、培った経験から、自分に対して全面的に協力してくれる味方は稀な存在であり、また、立場の違いや利害の対立により、必ず敵が生まれることも理解していたのではないでしょうか。
そして、そうした中で重要な存在になるのが、敵でも味方でもない人たちだと考え、そういった人たちを一人でも増やし、広大なる中間地帯を作ることが大切だと考えていたのでしょう。
政治であれ実業であれ、大きな成果を上げるためには、組織的な動きが必要不可欠ですが、その中心となるのが、敵でも味方でもない人たち(中間地帯)ということですね。
また、田中角栄氏は、その中間地帯が、時として敵との緩衝地帯になることも理解していたと思われます。
敵でも味方でもない人たち(中間地帯)は、必ずしも自分に積極的に協力してくれるわけではないだろうが、積極的に攻撃してくることもないだろう。
そして、そういった人たちが周囲にたくさんいれば、仮に敵と対峙することになっても、緩衝地帯として機能してくれるだろうし、場合によっては、自分の味方をしてくれることもあるだろう。
田中角栄氏は、こうした考えから、「広大なる中間地帯を作れ」と常々口にしていたのではないでしょうか。
また、田中角栄氏は、与野党を問わず広くお付き合いをしていたと言われていますが、それからすると、敵と味方を明確に分けるような二分割思考の危険性についても理解していた可能性がありそうです。
二分割思考は認知の歪み
「敵と味方」「善と悪」のように、物事を白と黒とに明確に分けようとする思考のことを二分割思考と言いますが、こうした完全主義的な思考の癖は、認知の歪みの一つなのですよね。
いったんそういった思考の癖がつくと、自分に対しても他者に対しても、あらゆる物事に対しても完璧を求めるようになり、ついには、心も体も疲弊してしまうことになります。
二分割思考が人間関係に与える影響
また、二分割思考になると、少しの意見の食い違いで相手を敵とみなしてしまったり、相手から少し批判されただけでひどく落ち込んでしまうといったことが起こり、それが続くと、少しずつ「味方」が減り、逆に「敵」がどんどん増えていってしまいます。
そして、それが原因で他者との良好な関係が築けなくなったり、他者との関係が長続きしないといった悩みを抱えてしまうことになるのですよね。
考え方を変えると物事が好転する
こうした認知の歪みは誰にでも起こり得ることで、また、必ずしも悪いものではありませんが、人は、考え方が変わると、気持ちも行動も大きく変わるものです。
そのため、偏った考え方を手放し、幅広い考え方をするだけで、物事が好転する場合もあるわけですが、田中角栄氏も、こうした理解のもとで行動していたのかもしれませんね。