随分前に読んだ本か雑誌で、アメリカで「ダウンシフター」というライフスタイルを選択している人がいるという話しを読んだことがあります。
「ダウンシフター」とは、「働き過ぎのライフスタイルは生活を破壊する」との考えから生まれたもので、「収入や支出を減らして、ゆとりある生活をする新しいライフスタイル」ということでしたが、そういった生き方も悪くはないですよね。
シフトダウン(減速)して得られた「ゆとり」という自由な時間を使い、他者との交流や趣味を楽しむといった生き方ができれば、心豊かで健やかな日々を過ごせるような気がします。
自由度が低い日本社会
ただ、そういった価値観を持つことと、実際にその価値観で生活することとはまったく別な話しですし、両者の間に大きな開きがあるのが、今の日本の社会ではないかと思います。
例えば、学生時代も含め、経歴に空白があるだけでマイナスの評価になってしまいますし、また、若い頃に正社員の経験が無いというだけで、ハンディキャップになりますからね。
また、日本の社会には、競争社会という側面もあると思います。
良い企業に就職するために良い学校に入るのも競争ですし、良い学校を出て良い企業に就職するのも競争です。
そして、就職してからも高いパフォーマンスが求められ、昇給するのも昇進するのも社内競争の結果次第というのが現実ですからね。
これでは、自由な道を選択しようにも、思うように選択できないのではないでしょうか。
優秀な人は自由度が高い
もちろん、そういった競争に勝つことができる優秀な人であれば、自由な道を選択することも容易だろうと思います。
優秀な人であれば働き口に困ることもないと思いますし、副業によって複数の収入源を確保することもできるでしょうし、実際に確保することができれば、そのうちの一つくらい欠けたところで生活に困ることはないでしょうからね。
そういう人であれば、「稼がない自由を選択する」と決めた瞬間から、ダウンシフターというライフスタイルを選択することができると思います。
早期退職や定年退職は絶好の機会
一方、ふつうのサラリーマンの場合は、自由な道を選択したければ、早期退職や定年退職を機会にするのが良いと思います。
そうすれば、そこに至るまでに十分な準備期間が確保できると思いますし、実際に準備が整った時点で、ダウンシフターとして生きることができるでしょうからね。
ただ、退職後のお金の計算はしっかりやっておかないと、後々苦労することになってしまうかもしれませんので、その点は気をつけたほうが良いと思います。
仮に貯蓄だけで暮らしていけるとしても、何かしらの収入源を確保しておくほうが、より安心ではないでしょうか。
自由は選択であって甘えではない
また、今の日本で「自由に暮らしたい」と言うと、「甘え」ではないかといった批判を受けることがありますよね。
日本人は勤勉で献身的であり、勤労精神も高いので、そういった批判はもっともだと思います。
ただ、その一方で、働き方や価値観も少しずつではありますが変わってきていますからね。
そういった変化の中で、どのようなライフスタイルを選択するかは個人の問題ですので、「自由に暮らしたい」という選択をしても良いと思いますし、そうである以上、それを「甘え」と批判するのは良くないと思います。
自分の時間は大切
また、2000年を過ぎた頃だったと思いますが、日本でも「スローライフ」という生き方が話題になったことがありましたよね。
「スローライフ」とは、「効率やスピードを重視することなく、ゆったりとした時間を楽しむというライフスタイル」ですが、自分の時間を大切にするという点では、ダウンシフターというライフスタイルと共通していると思います。
そして、ダウンシフターが「働き過ぎ」を否定しているように、スローライフは「便利さ」を否定しているわけですが、どちらも、今の社会の一部分を否定するライフスタイルであるという点も共通していますね。
今の社会では、多くの人が仕事をしてお金を稼ぎ、そのお金で便利さを得ているわけですが、お金を稼ぐために「自分の時間を切り売り」し、便利なコミュニケーションツールによって「自分の時間が削られる」ことにストレスを感じた人が、スローライフやダウンシフターといったライフスタイルを選択しているのかもしれません。
やはり、人間にとって「自分の時間」というのは大切なものなのですよね。自分のために過ごす時間がないと心が満たされないのが人間ではないかと思います。
少しでも多く自分のために過ごす時間を作り、その中で自分と向き合い、趣味を楽しみ、学び、多くの体験をすることが、心豊かで健康な暮らしにつながるような気がします。
その時その時を楽しむ
今一度、自分自身の生活を振り返ってみましょう。
平日は朝早くに起きて仕事に向かい、日中は締め切りに追われ、仕事が終わらなければ遅くまで残業する。そして、休日も仕事のメールに目を通し、場合によっては仕事の電話にも対応する…
といった慌ただしい生活を送っている人もいるのではないかと思いますが、何のためにそういった生活をしているのか、そこから何が得られ、何を失っているのかについて、改めて考えてみると良いと思います。
そして、今の生活に少しでも疑問を感じたら、シフトダウンして仕事以外のものに目を向けてみてはどうでしょう。
そうすることで、外を歩いているときに目に入る風景や友人との何気ない会話など、その時その時が価値あるものだと気づけると思いますし、それらを楽しむことができれば、人生に対する新たな視点が得られると思います。