闇バイトは無くならない

夏以降、首都圏を中心に闇バイトによる強盗事件が相次いで発生していますが、金品を強奪するためには手段を選ばないということなのか、犯行の手口が凶悪化しているのが気になりますね。

また、当初は貴金属店などが狙われていたのが、その後は一般住宅が狙われるようになったところも気になります。強盗の金額が小さくなっても、犯行が行いやすい一般住宅を狙うようになったのだとしたら、今後も同様の犯行が続くかもしれません。

そして、もっとも気になるのが、これだけ闇バイトの問題が指摘されているにも関わらず、闇バイトへの応募者が後を絶たないということですね。

もちろん、闇バイトが無くならない理由もあると思いますので、すぐにどうこうなるものでもないとは思いますが、しっかりとした対策が必要なのではないでしょうか。

今回の一連の強盗事件は、いわゆるトクリュウ(匿名流動型犯罪グループ)による犯行と言われていますが、そのトクリュウを支えている仕組みが闇バイトですからね。

 

闇バイトという労働市場の存在

さて、そんな闇バイトですが、その存在に欠かせないのが、SNSというサービスでしょう。

SNSは便利なサービスですが、その便利さゆえに、金銭欲を満たすためなら犯罪に手を染めても良いと思っている犯罪組織と、高収入の仕事を探している一般人との出会いの場になっているわけです。

そして、実際にSNS上で両者が出会うと、互いの利害の一致から、使い捨ての人材が欲しいという犯罪集団の需要に対して、高収入を得たいと願う一般人が労働力を供給する闇バイトが生まれるのですね。

また、両者の関係は、高収入を得たいと願う一般人の需要に対して、犯罪組織が仕事を供給しているという持ちつ持たれつの関係でもありますが、いずれにしても、SNS上に闇バイトの労働市場が形成されていて、実際にそれが機能しているというのが実態だろうと思います。

こんな状態では、闇バイトもトクリュウ型犯罪(匿名流動型犯罪グループによる犯罪)も無くならないですよね。

闇バイトの全体像

闇バイトの全体像

 

闇バイトを無くすための3つのアプローチ

ただ、逆に言えば、こうした実態さえ無くなれば、闇バイトもトクリュウ型犯罪も無くなるわけですから、そこを目指して、以下のような対策をするのが良いのではないかと思います。

(1)出会いの場になっているSNSへの対策

SNS上には、闇バイトとはまったく関係のない多くの善良な利用者がいますので、SNSそのものを無くすわけにはいきませんが、例えば、AIを使うことで犯罪の兆候を察知し、それを未然に防ぐといったことはできそうですね。

もちろん、通信の秘密をどう守るかといった課題もありますので、仮にそれを実行するにしても、慎重に行う必要はあると思います。

(2)犯罪集団への対策

金銭欲や物欲といったものは誰にでもありますが、残念なことに、世の中にはそれを満たすためなら犯罪に手を染めても良いと考えるような、社会性が欠如した人間も一定数いるのですよね。

そういった人間に対しては、犯罪の事実があるごとに検挙していくしかないと思いますが、トクリュウ型犯罪では、検挙自体が難しいという問題があるようですので、捜査技術を向上させ、より検挙率を高めていくことが必要だろうと思います。

(3)闇バイトに応募する一般人への対策

一般人が闇バイトに応募しないようにするというのがもっとも効果的な対策に思えますし、実際、警察などが啓蒙活動を行っているわけですが、それだけではうまくいかないというのが現状のようです。

犯罪とは縁がないはずの一般人が、なぜ闇バイトに応募してしまうのかという根本的なところへの対策が必要なのだろうと思います。

 

一般人はなぜ闇バイトに応募するのか

一般人が闇バイトに応募する理由は様々だと思いますが、闇バイトに関する報道を見る限りでは、概ね、以下のようにまとめられるのではないかと思います。

恐らく、こうしたことを解決しない限り、闇バイトは無くならないでしょうね。

(1)金銭問題

ローンの支払いといった借金問題や、税金や健康保険料の滞納問題により多額の金銭が必要になり、それを得るためにSNSで高収入のアルバイトを探し、行きついた先が闇バイトだったという人が多いように感じます。

闇バイトの危険性を周知することに加え、そうした金銭問題を解決する方法も周知したほうが良さそうですね。

(2)未熟な常識

自分の好きなコンテンツだけを見ているという人も多いようですが、好きなコンテンツだけを見てニュースに触れていなければ、闇バイトがいかに危険なものかを知ることすらできないと思います。

家庭環境に問題があってそうなるのかもしれませんが、いずれにしても、年齢相応の常識を身につける機会を増やすことが必要ではないでしょうか。

(3)衝動性の高さ

世の中には、後先を考えずに思いついたままに行動してしまう人が一定数いますが、闇バイトに応募した人の中にも、そういった人が一定数いるようです。

日頃からそうした傾向がある人は気をつけたほうが良いと思いますし、生まれつきの疾患が原因でそうなる場合もあるようですので、気になる場合は、医師の診断を受けてみるのも良いかもしれません。

(4)SNSでのバイト探し

SNSでのバイト探しが一般的になりつつあるようですが、そういったことも、一般人が闇バイトに行きつく原因の一つになっていると思います。

仕事を探す場合は、求人サイトなどの、提供される情報に他人の目が入るようなメディアを利用するようにしたほうが良いかもしれません。

 

人間は追い込まれるほど自分に都合よく解釈する

また、これは闇バイトに限った話しではありませんが、人間には、追い込まれるほどに、物事を自分に都合よく解釈してしまう傾向があります。

いわゆる認知バイアスですが、闇バイトについても、この認知バイアスが作用しているようですので、気をつけたほうが良さそうです。

・自分にとって都合のいい情報に注目してしまったり(確証バイアス)、
・逆に、都合の悪い情報を過小評価してしまったり(正常性バイアス)、
・他者の視点や意見を過小評価してしまう(自己中心性バイアス)
ことで、闇バイトに行き次いでしまうわけですね。

 

闇バイトの原点は闇サイト?

「闇バイト」という言葉が話題になるようになったのは、ここ数年のことだと思いますが、その前には、「闇サイト」という言葉が話題になっていたことがありました。

闇サイトは、金銭目的で犯罪をしようとしている人たちが情報交換をするための匿名掲示板ですが、2007年には、そこで知り合った男3人組が、金銭目的で見知らぬ女性を拉致・監禁し、のちに殺害するという事件も起こっているのですよね。

このように、闇バイトと闇サイトでは、匿名性を利用して情報をやり取りし、グループを形成して犯罪に手を染めるという点が共通しているわけですが、それからすると、闇バイトの原点は、闇サイトにあるのかもしれません。

もしかしたら、当時の闇サイトの利用者たちの一部が、今は闇バイトに関わっているといったこともあるかもしれませんね。

 

無くならないトクリュウ型犯罪

また、トクリュウ型犯罪の一つに、振り込め詐欺などの特殊詐欺がありますが、過去10年のデータを見ると、減る気配すらないことがわかりますね。(数値は警察庁のサイトから引用)

特殊詐欺事件の認知件数と検挙件数

特殊詐欺事件の認知件数と検挙件数

闇バイトによる一連の強盗事件が報道され始めた当時は、特殊詐欺で稼げなくなったトクリュウが、新たな活路を見出すために強盗事件を起こすようになったのではないかと思っていたのですが、その見立ては間違っていたようです。

この状況からすると、今後もトクリュウ型犯罪は続きそうですね。