「人は生まれ、いつか死ぬ」
この当たり前のことにどう向き合うかは、案外難しいことなのかもしれませんね。
どんな人でもいつかは死ぬということは誰もが知っているはずなのに、多くの人は、自分はまだ大丈夫だと思って日々を過ごしているような気がしますし、かくゆう自分も、最近まではそうでした。
ただ、身近な人の死を目の当たりにしてからは、死に対する備えも必要ではないかと考えるようになったのですよね。
今はまだ考えているだけで、具体的なことは何もしていませんが。
どのような最期を迎えたいか
「どのような最期を迎えたいか」
そんな質問をされたら、ほとんどの方は、「穏やかな死」「安らかな死」といった回答をされるのではないでしょうか。
また、「最後までふだん通りに生活したい」「自宅で最期を迎えたい」といった回答をされる方もいらっしゃるかもしれませんね。
いずれにしても、これらはいわゆる「平穏死」「尊厳死」といったことを望んでいるということだろうと思いますが、恐らく、多くの方が願っていることではないかと思います。
ただ、その一方、医療や医学の進展によって、人の最期については様々な措置が可能になっていますので、そういった措置を受けることが自分の最期にどう影響するのかといったことについても、考えておく必要がありそうですね。
リビング・ウィル
また、自分の最期は自分で決めるのが良いと思いますし、そういったことについて考えがまとまったら、その内容を書面にしておくことも大切ではないかと思います。
最期まで意思表示ができる状態であれば良いですが、そうでない場合は、あらかじめ用意した書面で意思表示するしかありませんからね。
そして、そういったときに役立つのが「リビング・ウィル」です。
これは、判断能力のある成人が、病気などで判断能力を失った場合に備えて、延命措置や尊厳死に対する自分の意思を示すための書面で、医師会などが配布しているものです。
現在(2024年)の日本では、このリビング・ウィルの効力を保証する法律はありませんが、厚生労働省や医学会などのガイドラインでは、リビング・ウィルを尊重することになっていますので、これにより、希望に沿った最後を迎えることができると思います。
家族の同意も大切
また、家族がいる場合は、自分の生き方や考え方について、日頃から家族に伝えておくことも大切だろうと思います。
家族は家族で、それぞれに生き方や考え方がありますからね。
身内が最期を迎えるにあたり、措置を望む家族もいれば、そうでない家族もいて、それが原因で、折り合いが悪くなることもあるわけです。
そして、患者の家族がそういった状況になると、患者に対応する医師も困惑することになります。
自分も看取る立場になって、初めてそういった経験をしましたが、そこで感じたのが、家族の同意の大切さでした。
高齢化社会という多死社会
また、今の日本は高齢化社会ですが、それは同時に、多くの方が亡くなっていくという多死社会でもあり、そうした中、人の最期にまつわる問題も増えているのではないかという気がします。
「自分の最期は自分で決める」
多くの人がこうした考え方にならないと、限られた医療資源が枯渇してしまうかもしれませんし、現役世代の負担がより大きくなってしまうかもしれませんね。
実際のリビング・ウィル
さて、そんなリビング・ウィルですが、医師会などの団体が記入例などの情報を提供しているものの、全国的に統一された雛型は無さそうですので、自分の希望に近い雛型を探して利用するか、それを参考に作成するのが良いと思います。
個人的には、以下の点についての希望と日付を記入し、署名捺印をして見つけやすいところに保管しつつ、家族やかかりつけ医などにコピーを渡しておくのが良いのではないかと思っています。
また、日付が古いリビング・ウィルは、本人の意思が反映されたものかどうかについての疑念が生じる可能性がありますので、数年に一度くらいの頻度で内容を確認し、その都度、日付の記入と署名捺印を繰り返すほうが良いと思います。
1.医療措置の希望
・自力で呼吸ができなくなった時の医療の提供
延命のための人工呼吸器の使用など
・自力で心臓が動かなくなった時の長時間にわたる医療の提供
心臓マッサージなどの心肺蘇生など
2.栄養補給や水分補給の希望
・自分の口から栄養を摂れなくなった時の医療の提供
点滴による水分補給、鼻チューブや胃ろうによる栄養補給
3.緩和ケアの希望
・痛みや苦しさの程度に応じた鎮痛剤や鎮静剤の使用による苦痛の軽減
4.意思の疎通ができなくなったときの希望
自身の代諾者に判断を求めるかなど
5.最期の過ごし方の希望
自宅で過ごしたいかなど
6.その他
これ以外に希望することがあれば記入しておく