国民負担率の推移 (2024年)

たまに「国民の負担感」といったことが話題になりますが、実際のところはどうなのかと思い、国民一人あたりの税金や社会保険料の負担の大きさを示す国民負担率の推移を見てみました。

 

国民負担率の推移

以下のグラフは、財務省が公表している過去15年間の国民負担率と、その内訳である租税負担率、社会保障負担率をグラフにしたものです。

国民負担率の推移

国民負担率の推移

 

年によって多少の増減はあるものの、長期的な傾向としては右肩上がりですが、その背景には、2014年と2019年の2度の消費税率の引き上げや、高齢化に伴う医療費や介護費などの社会保障負担の増加があるのではないかと思います。

また、2022年度の48.4%をピークに、2023年度以降、2年続けて国民負担率が低下していますが、これは、企業業績の回復による雇用者報酬の増加などにより、負担の増加を上回る国民所得の伸びがあったからだと思います。(2024年度は定額減税の影響もありそうです)

なお、日本では、租税と社会保険料の合計額を国民所得で割ったものを国民負担率と定義しているそうで、外国のそれとは計算方法が異なっているということです。

 

潜在的国民負担率の推移

また、財務省が公表しているデータの中に、国民負担率に国が抱える財政赤字を加えた潜在的国民負担率という指標もありましたので、それについてもグラフにしてみました。

潜在的国民負担率の推移

潜在的国民負担率の推移

 

これは、租税負担や社会保障負担に、将来の世代が負担する財政赤字を加えた「潜在的な負担水準」という意味合いの指標のようですが、数値を見ただけでも大きな負担感を感じますね。

また、2020年度は、62.7%という高い数値になっていますが、これは、感染症対策などの財源が短期国債の発行を中心に行われたことが原因のようです。

ただ、それが無かったとしても、潜在的国民負担率は50%程度になっていると思われますので、今の日本は、歴史の授業で習った「五公五民」状態ではないかという気がしますし、今後も負担の増加が続くと思われますので、将来的には「六公四民」くらいになるかもしれませんね。

 

昔はどうだったのか

さて、国民負担率や潜在的国民負担率の推移についてはこんな感じですが、昔のそれらは、どのくらいの数値だったのかと思い、少し遡ってみました。

1975年の国民負担率と潜在的国民負担率

1975年の国民負担率と潜在的国民負担率は、以下のような数値でした。

国民負担率    25.7% (租税負担率は18.3%、社会保障負担率は7.5%)

潜在的国民負担率 33.3%

1975年は、いわゆる団塊の世代が働き盛りだった頃ですが、特に社会保障負担率の数値の低さには驚かされますね。

現役世代の人口が多く、現役世代に支えられる高齢者世代の人口が少なかったことも影響していると思いますが、1975年前後は、少子高齢化の予兆が現れ始めた頃とも言われていますので、当時から何らかの対策をしていれば、今のようにはなっていなかったかもしれません。

1990年の国民負担率と潜在的国民負担率

1990年の国民負担率と潜在的国民負担率は、以下のような数値でした。

国民負担率    38.4%

潜在的国民負担率 38.5%

1990年はバブル崩壊の直前ですが、15年前のそれと比べると数値が高くなっていることがわかります。

2008年の国民負担率と潜在的国民負担率

2008年の国民負担率と潜在的国民負担率は、以下のような数値でした。

国民負担率    39.2%

潜在的国民負担率 45.3%

2008年はリーマンショックが起こった年ですが、この頃にはさらに数値が高くなっていたことがわかります。

 

国民負担率が増加する原因

また、このように国民負担率や潜在的国民負担率が増加してしまった原因は、主に2つあるのではないでしょうか。

少子高齢化

一つは、少子高齢化ですね。

全人口に対する高齢者の割合を示す指標に高齢化率がありますが、1995年には14.6%だったものが、2020年には28.9%まで急激に上昇しており、それにより社会保障費の支出が増加し、その財源を確保するために税金や社会保険料の負担が増えていることが大きく影響していると思われます。

経済の低迷

また、もう一つは経済の低迷ですね。いわゆる「失われた30年」の影響があると思います。

1990年代初めに起こった「バブル崩壊」以降、一人当たりの名目賃金がほぼ横ばいで推移し、また、その間の低金利政策により、利子所得も減少する中、消費税などの税負担や社会保険料の負担だけが増加してきましたからね。

「失われた30年」の間に法人の所得は2倍に増加したと言われていますが、賃金もそれと同じくらいのペースで増加していれば、今とは変わった状況になっていたかもしれません。

 

社会保障制度の改革が必要

また、このところ年金制度改革が話題になっていますが、このあたりも根本的に見直さないと、国民負担率が増加する一方になってしまうような気がします。

保険料収入だけでは支出を賄いきれず、税金が投入されているのが現状ですからね。制度としては、破綻しているのではないかという気がします。

国民年金 … 保険料収入:1.4兆円、税金:1.9兆円

厚生年金 … 保険料収入:39.3兆円、税金:11.5兆円

厚生労働省が公表している公的年金財政状況報告(2022年度)から引用

 

参考:他国との比較

また、日本以外の国の国民負担率がどうなっているのかも見てみました。

国によって計算方法が違うため単純には比較できませんが、他国と比べると日本の国民負担率は低いようですね。

今後どうなるかはわかりませんが…

日本…47.7% アメリカ…32.3% イギリス…46.0%

ドイツ…54.0% フランス…69.9%

財務省が公表している2020年の値を引用しました