大企業を中心に初任給をアップする動きが高まっているという話しがあるようですが、実際はどうなのかと思い、1980年から2023年までの大卒者と高卒者の初任給の推移をグラフにしてみました。
大卒者の初任給の推移
※データは厚労省の賃金構造基本統計調査から引用 (単位:千円)
高卒者の初任給の推移
※データは厚労省の賃金構造基本統計調査から引用 (単位:千円)
失われた30年がよくわかるグラフ
厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査の結果をもとに、大卒者の初任給の推移と高卒者の初任給の推移をグラフにしてみましたが、どちらも、いわゆる「失われた30年」がよくわかるグラフになっていますね。
30年近くまったく賃金が上がらなかったというわけではないようですが、その間のグラフの傾きはほぼ横ばいで、バブル崩壊前のそれと比べると違いがよくわかります。
また、この最近のグラフの傾きは、バブル崩壊前のそれに近いものになっていますので、初任給をアップする動きが高まっているというのは間違いなさそうですね。
そして、こうした賃金の上昇に加え、働き方改革による労働時間の減少もありますので、若い世代の待遇改善は進んでいるとみて良いのではないでしょうか。
就職氷河期や非正規雇用といった言葉がよい例だと思いますが、バブル崩壊以降、若い世代の雇用は労働市場の需給に大きく影響されてきましたからね。
需給が緩い中、企業は若い世代を安い賃金で使い倒してきたわけですが、最近の需給のひっ迫により、それが難しくなっているので、人手不足がさらに深刻化する前に、長期的な就労が見込める若い世代を正規雇用で確保しようとして、待遇を改善しているのでしょう。
新卒者以外の賃金はどうなっているのか
一方、新卒者以外の賃金はどうかというと、必ずしも上昇しているというわけではなさそうですね。
以下の表は、2019年の賃金を「100.0」として、2020年以降の賃金がどう変化したかを一覧にしたものですが、全体の賃金よりも初任給のほうが伸びが大きいことがわかります。
全体の賃金 | 大卒初任給 | 高卒初任給 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
2019年 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
2020年 | 100.2 | 100.3 | 106.8 | 108.6 | 106.3 | 106.1 |
2021年 | 99.8 | 101.0 | 106.5 | 108.2 | 107.5 | 107.1 |
2022年 | 101.2 | 103.1 | 107.9 | 109.8 | 108.6 | 107.9 |
2023年 | 103.8 | 104.6 | 112.9 | 113.2 | 111.9 | 111.3 |
※厚労省の賃金構造基本統計調査のデータを使用
従業員に賃金を支払う企業側からすれば、基本的に「原資」は一定なので、どこかを増やせばどこかを減らすということなのでしょうね。
そのため、初任給を上げるには、中堅層やベテラン層の賃金を据え置くか、あるいは減少させるしかなく、その結果がこの表にある数値なのだろうと思います。
中高年世代は厳しくなる
さて、こんな感じで若い世代を正規雇用しているとすると、今後ますます中高年世代への風当たりは強くなりそうですよね。
特に、賃金に見合う稼ぎのない中高年世代は、リストラの最有力候補にされてしまうのではないでしょうか。
また、最近は黄昏研修を導入している企業も増えているそうですからね。
これは、企業が40~50歳代の社員に対して、セカンドキャリアを検討してもらうための研修と言われていますが、そういった綺麗な言葉で説明できる内容かどうかは怪しいと思います。
いずれにしても、労働市場の潮流は変化していると思いますので、それに合わせて生き方を考えないといけない時代になったのだろうと思います。