「静かな退職」が静かなブームになっているようですが、たまたまそれっぽい言葉が発信されて使われるようになったというだけで、こういう話しは以前からあったと思います。
日本人が勤勉であるというのはその通りですが、多くの人が与えられた仕事を淡々とこなしているというのが実態のような気がしますし、以前から「静かな退職」が一般的な働き方になっていたような気もしますね。
静かな退職という働き方
2022年にアメリカのキャリアコーチが発信した「Quiet Quitting」の日本語訳が「静かな退職」と言われていますが、意味合いとしては、「やりがいや熱意が薄く、必要最低限の業務だけを淡々とこなす働き方」ということのようですね。
また、「退職」とは言うものの、実際に退職するわけではなく、組織に所属したまま精神的に「退職」したような状態で働くことが、「静かな退職」ということでもあるようです。
まあ、悪く言えば「やる気のない社員」なのかもしれませんが、「自分に与えられた業務」を「精神的な余裕がある状態」でこなすという点では、「ワークライフバランスを意識した社員」という見方もできそうですね。
ニュースで扱われる「静かな退職」は、どちらかと言えばネガティブな扱われ方になっていますが、時流からすれば、少なくとも否定されるような働き方ではないと思います。
むしろ、メンタルヘルスやプライベートが重要視されるようになった今の時代においては、理想的な働き方の一つではないかという気もしますね。
日本人のエンゲージメントは低い
また、「静かな退職」が注目されるようになった背景には、日本人のエンゲージメントの低さもあるような気がします。
ここで言うエンゲージメントとは、「仕事や職場に対す愛着、信頼、貢献意識」のことですが、日本人のエンゲージメントは、OECD加盟国の中でもかなり低いらしいですからね。
・仕事への熱意が強い従業員…5% (20%)
・仕事への熱意に欠ける従業員…72% (64%)
・組織の妨げになりうる従業員…23% (17%)
この数値は、アメリカのギャラップ社という世論調査会社が2022年に実施した調査の結果ですが、日本では、仕事への熱意が強い従業員は20人に1人しかいないようです。(カッコ内はOECD加盟国の平均値)
また、約4人に3人が、仕事への熱意に欠ける従業員という結果でしたが、それはすなわち、このくらいの割合で「静かな退職」をしている人がいるということだろうと思います。
ときには本音を語ることも大切
もともと日本人は、人前であまり本音を語りませんし、特に仕事に関してはその傾向が強いと思いますが、それもあって、これまでは「静かな退職」を公言する人もなく、そこに注目が集まることも無かったのだろうと思います。
ただ、最近はSNSの使用も一般的になり、そこで本音が発信されるようになり、さらに「静かな退職」というワードが登場したことで、最近になって注目されるようになったのではないでしょうか。
この「静かな退職」の話しが、この先どうなっていくのかはわかりませんが、まずは、これまで語ることのなかった本音を語ることが大事ではないかと思います。
「会社の方針に納得できない」「本来の仕事を超えた過大な要求がある」など、「静かな退職」には何かしらの理由があるはずで、そこが明らかにならなければ、何も変わりませんからね。
また、雇う側にも工夫が必要だろうと思います。「静かな退職」を選択した人の中には、付き合い方と与える仕事さえ間違わなければ、大きな成果を出してくれる人もたくさんいると思います。