多文化共生の実態は多民族共生

JICA(国際協力機構)の「アフリカホームタウン」という取り組みが「移民促進」ではないかと批判されていますが、そもそもの話し、なぜ「ホームタウン」というネーミングにしたのですかね?

外国人にとって、ホームタウンは「故郷」を意味する言葉ではないかと思いますし、それでタンザニアの現地メディアが、「日本は長井市タンザニアに捧げた」と記事にしたのではないかと思います。

また、「SNSがデマを拡散した」という話しは少し違いますね。デマを流したのは外国政府や海外メディアですので、SNSを悪者扱いするのは良くないと思います。

 

日本政府もJICAも否定はしているが…

今回の騒動については、日本政府(外務省)とJICAが以下のようなコメントを出していますが、いかにも「役所の対応」といった感じのコメントですよね。

これが民間企業であれば、「誤解を招いたことに対する謝罪」や「誤解が生まれた経緯の説明」に「今後の対応」。場合によっては「関係者の処分」といった内容になると思います。

SNSの書き込みを見ると、批判している人の多くが日本政府やJICAを信用していないように思えるのですが、このコメントでは、そうなるのも仕方がないと思いますね。

「外国人問題を放置してきた日本政府がまた何かやろうとしている」とか、「JICAというよくわからない組織が良からぬことをしようとしている」というのが、批判している人たちに共通した感覚のような気がします。

移民の受け入れ促進や相手国に対する特別な査証の発給を行うといったことは想定されておらず、こうしたことが行われるという一連の報道・発信は事実ではありません (外務省のサイトから引用)

山形県長井市タンザニアの国の一部になると誤解を与えるような記載や、移民の受け入れ促進、日本と当該諸国との往来のための特別な査証の発給等の記載は、いずれも事実に反します (JICAのサイトから引用)

日本政府やJICAへの不信感の理由

また、日本政府やJICAへの不信感は、以下のようなことが原因で生じているような気がします。一言で言えば、「日本政府は信用されていない」「JICAは知られていない」ですね。

「約4人に3人が難民申請者で、約3人に1人は不法滞在者」といった状況になるまで放置してきた日本政府は信用ならない。

「7割近くの人がJICA海外協力隊が何をしているのかを知らない」というくらい知名度のない組織が、日本の複数の都市を「アフリカホームタウン」に認定しているのはおかしい。

今回の件を批判している人たちの中には、こんな感覚を持っている人もそこそこいるような気がします。

川口市内のトルコ国籍者は2206人で、うち904人が「特定活動(難民認定手続中)」の在留資格、その約7割は就労可能だった。また仮放免者は717人、新設の「監理措置」者が31人。これらを合わせると全体の約75%は難民申請者で、大半はクルド人とみられる (産経新聞記事から引用)

2023年4月に事業広報効果測定(当初調査)調査で20~30代の7割近くがJICA海外協力隊の名前を知らない、知っていても何をやっているのか知らない、というデータが出た (JICAが公表している資料から引用)

JICAがどう説明したのかも気になる

また、JICAが外国政府や現地メディアに対して、どのような説明をしたのかも気になるところです。

例えば、JICAが公表している「コンサルタント等契約(業務実施)(2025年1月15日)」という資料の中の「アフリカ地域」に係る業務内容には、以下のような文言があるのですが、これで「アフリカホームタウンは交流事業」と言われても説得力がないですよね。

移民促進かどうかはともかく、少なくともJICAは、外国人の受け入れには積極的と思われても仕方がないと思います。

JICA案件を通じた日本就労への活用可能性等 (24a00883000000)

自国外での就労機会を求める外国人材から日本が『選ばれる国』となるための環境整備が急務 (24a00925000000)

タンザニア及びガーナを対象とし、両国出身の若年層の日本での就業可能性検討  (24a00925000000)

多民族共生は難しい

また、今回のような騒動が起こるということは、それだけ「外国人の受け入れは難しい」と考えている日本人が多いということなのかもしれませんね。

日本人は、「遠慮」という行動様式と「お互い様」という精神によって周囲の人との距離を調整し、「和」を重んじ、「空気を読む」ことに長け、「同調圧力」に耐える集団主義の民族ですので、個人主義の外国人とは相容れないと感じているということかなあ…

多文化共生と言うと聞こえは良いですが、その実態は多民族共生ですので、そう感じる人が多いということであれば、外国人の受け入れについては慎重になったほうが良さそうです…

と、こんなことを書くと排外主義者と言われてしまいそうですが、こうした意見も極端ですよね。多様性を訴える人ほど、自分と異なる意見に対する寛容さが無いように感じますし、それでは共生しようにもできないと思います。