2024年12月に川崎市で発生したストーカー殺人事件について、神奈川県警から検証結果が公表されたのでざっと読んでみたのですが、この事件は、警察が十分に機能しなかった結果だったのだろうと感じました。
また、検証結果によれば、今回の事件は大きく三つの事案に分かれているようなのですが、提出された被害届が取下げられるなど、対応の難しさはあったと思われるものの、第三の事案の対応は良くなかったと思いました。
第一の事案
24/06/13 被害者から「交際者とけんかして服を破られた」旨の電話【暴行】
24/07/05 交際解消の申立てにより事態が沈静化したとして本事案を結了
「被害者及び被疑者の双方に連絡しトラブルが生じていないことを確認し、被害者の父親等を交えた話し合いにより交際を解消した旨の申立てがあった」ということなので、この事案についての警察の対応には問題は無かったと思いました。
第二の事案
24/09/20 被害者の父親から「被害者が被疑者から殴られた」旨の電話があり、被害者から被害届を受理【暴行】
24/10/29 被害者が「事実と異なる説明をした」と申立て被害届を取下げ
24/10/31 被害者の姉から「自宅マンションに誰かが侵入した、おそらく被疑者」と110番通報【住居侵入】(被害者は姉の自宅に滞在中)
24/11/05 被害者の姉から「被疑者が自宅マンションの駐輪場にいた」旨の電話【住居侵入】【つきまとい】
24/11/22 被害者・被疑者からの復縁・同居の申立て等により事態が沈静化したとして本事案を結了
暴行については、捜査はしたものの被害届が取下げられたことで「終結」したようですね。警察は被害者に対して「取下げを翻意するよう説得」したようですが、ここはもう少し慎重に扱ったほうが良かったのではないかと思いました。
また、住居侵入については、「被疑者が被害者につきまとっていたことを自認したため、口頭指導するとともに、より強力な措置であるストーカー規制法に基づく警告・禁止命令等の措置の検討」をしたようです。
ただ、「被害者の意向確認や手続を速やかに行えなかった上、11月10日から同月19日まで被害者が一時所在不明となる事案が発生したため、警告・禁止命令等の措置を講じる機会を逸した」ようです。
ここで措置を講じていれば、違った結果になった可能性はありそうですね。
また、「被害者は11月10日から被疑者と復縁」し、被害者宅で「同居していた」ようなのですが(それで所在不明だった)、被害者の意思でそうしたのか、被疑者から強要されたのか、そのあたりはよく分かりませんでした。
第三の事案
24/12/09 被害者から臨港署に対する電話(9日~20日に9回)
24/12/16 被害者が来署、自転車盗の被害届を受理
24/12/22 被害者の親族から「被害者が滞在する祖母宅のガラスが割られている」「被害者と20日から連絡が取れない」と110番通報
24/12/23 被害者の父親から行方不明者届を受理
24/12/24 特異行方不明者(生命に危険が及ぶ可能性のある行方不明者)と判定
24/12/26 被疑者が12月17日までの被害者へのつきまとい等を自認
25/01/14 被疑者の親族から、被疑者の不審な言動や被害者殺害の可能性について情報提供
25/04/30 被疑者宅をストーカー規制法違反で捜索、遺体発見
提出した被害届を取下げ、交際解消を申立てておきながら復縁して同居し、また被害届が提出されるといった状況ですので、もしかしたら「またか」という気持ちになっていたのかもしれませんね。
被害者の方は、連絡が取れなくなった20日に亡くなっていたようなのですが、9日から20日までの9回の電話で、緊急性や危険性を把握できていれば、違った結果になった可能性はありそうですし、連絡が取れなくなったことがその日のうちに警察に伝わっていれば…とも思いました。
また、被害者の父親は、警察に対して何回か(捜査が行われていないという)苦情を入れていたようですが、それへの対応も良くなかったようで、遺族としては納得がいかないところだろうと思いました。
組織の問題
恐らく、警察の体制が形骸化していて、関係する部署間の十分な連携がとれず、組織として機能していなかったところがあったのでしょうね。
また、こうした事案については「このような対応を」といった通達なども出されていたようですが、それらが組織の中に行き渡っていなかったような気もします。
教育の問題なのか、コミュニケーションの問題なのか、何かしらの問題を抱えた組織だったのだろうと思いますが、もしかしたら、人手不足の問題もあったのかもしれませんね。
自分の身は自分で守るのが基本
といった今回の事件ですが、検証結果を読んでいて、「自分の身は自分で守る」のが基本ではないかと感じました。
おかしな人には関わらない。身の危険を感じる場所には行かない。危ないと思ったらすぐ逃げて身を隠す。ふだんからこうしたことを意識しておく必要があると思います。
ただ道を歩いていただけで襲われて、場合によっては命を落とすこともあるような世の中ですからね。