たまに以下のような問題を見かけることがありますが、どの選択肢も正解に見えてしまうところが、こういう問題の難しいところですよね。
【問題】
ある商人が、宝石を80万円で仕入れて、それを90万円で売却しました。そして今度は、90万円で売却した宝石を100万円で買い戻し、それを110万円で売却しました。さて、この商人の儲けはいくらだったでしょうか?
【選択肢】
a.儲け無し
b.10万円の儲け
c.20万円の儲け
d.30万円の儲け
e.20万円の損失
この商人は、同一の商品(宝石)について4回の取引を行っていますが、それぞれの取引をどう見るかによって、回答が変わってくると思います。
(1)1回目の取引:宝石を80万円で仕入れた
(2)2回目の取引:仕入れた宝石を90万円で売却した
(3)3回目の取引:売却した宝石を100万円で買戻した
(4)4回目の取引:買い戻した宝石を110万円で売却した
- 「a.儲け無し」を選択した人
- 「b.10万円の儲け」を選択した人
- 「c.20万円の儲け」を選択した人
- 「d.30万円の儲け」を選択した人
- 「e.20万円の損失」を選択した人
- 結局どれが正解なのか
- 正解にたどり着ける人
- 機会損失という言葉は意識しているほうが良い
「a.儲け無し」を選択した人
買戻しも含め、この宝石を仕入れる際(手に入れる際)の「適正価格は80万円」だと考えた人は、「a.儲け無し」が正解に見えたと思います。
(1)損得なし
(2)10万円の儲け
(3)20万円の損失 (適正価格よりも20万円高く買戻し)
(4)10万円の儲け
トータルでは「儲けなし」
「b.10万円の儲け」を選択した人
90万円で売却した宝石を100万円で買い戻すことが10万円の損失だと考えた人は、「b.10万円の儲け」が正解に見えたと思います。
(1)損得なし
(2)10万円の儲け
(3)10万円の損失 (売却価格よりも10万円高く買戻し)
(4)10万円の儲け
トータルでは「10万円の儲け」
「c.20万円の儲け」を選択した人
「売値 - 仕入値 = 儲け」と考えた人は、「c.20万円の儲け」が正解に見えたと思います。
(1)損得なし
(2)10万円の儲け
(3)損得なし
(4)10万円の儲け
トータルでは「20万円の儲け」
また、すべての取引が現金取引だったと仮定して、増えた現金の額が「儲け」だと考た人も、「c.20万円の儲け」が正解に見えたと思います。
(1)80万円減少
(2)90万円増加
(3)100万円減少
(4)110万円増加
トータルでは「20万円増加」=「20万円の儲け」
「d.30万円の儲け」を選択した人
最初に80万円で仕入れた宝石を最終的に110万円で売却したので、その差額が「儲け」だと考えた人は、「d.30万円の儲け」が正解に見えたと思います。
(1)損得なし
(2)無視
(3)無視
(4)30万円の儲け (80万円で仕入れたものが110万円で売れた)
トータルでは「30万円の儲け」
ただ、これでは2回目と3回目の取引を無視することになりますので、この考え方は良くないと思います。
「e.20万円の損失」を選択した人
80万円で仕入れた宝石を110万円で売ることができたのに、売買を繰り返したことで儲けが少なくなったと考えた人は、「e.20万円の損」が正解に見えたと思います。
【理想の取引】
(1)損得なし
(2)30万円の儲け (80万円で仕入れた宝石を110万円で売却)
トータルでは「30万円の儲け」
【現実の取引】
(1)損得なし
(2)10万円の儲け
(3)10万円の損失 (90万円で売ったものを100万円で買い戻し)
(4)10万円の儲け
トータルでは「10万円の儲け」
【儲け】
30万円(あるべき儲け) - 10万円(実際の儲け) = 20万円(損失)
結局どれが正解なのか
間違った意思決定などによって、本来得られるはずだった利益を逃してしまうことを「機会損失」と言いますが、それからすれば、「e.20万円の損失」が正解でしょうね。
また、仮にこの問題が入社試験で出題されたとしたら、「e.20万円の損失」を選択した人が採用されるような気がします。
ただ、この問題で「e.20万円の損失」を選択する人は、100人に1人か2人くらいではないかという気もしますね。
正解にたどり着ける人
また、この問題の場合、機会損失という言葉を知っていた人は、最初から「e.20万円の損失」が正解に見えたと思いますが、そうでない場合でも、「e.20万円の損失」にたどり着ける人はいそうですね。
例えば、5つの選択肢のうち、もっとも無難な「c.20万円の儲け」と、一部の取引を無視している「d.30万円の儲け」を除き、残りの3つのうちのどれかが正解ではないかと考えるような人は、「e.20万円の損失」にたどり着けるような気がします。
こういう考え方をする人は、商人の判断ミス(意思決定の誤り)というところにも目が向く可能性が高いでしょうからね。
機会損失という言葉は意識しているほうが良い
また、特に仕事においては、「機会損失」という言葉を意識しておいたほうが良いと思います。
仕事は常に意思決定の連続ですので、それを間違うと面倒なことになったり、場合によっては利益を失うことになりますからね。いい加減な判断はできません。
ただ、機会損失をあまりに気にし過ぎると後悔の連続になりますので、そのあたりのバランスは必要でしょう。
どのような選択にも、得られるものもあれば失うものもありますので、意思決定も大切ですが、気持ちの切り替えも大切です。