安全かつ安心な保管場所というイメージのある銀行の貸金庫ですが、預けていたものが盗難に遭うこともあるようですね。
三菱UFJ銀行は、支店に勤務していた管理職の行員が支店の貸金庫を無断で開け、時価にして10数億円の金品を盗み取っていたと発表しました。
2024年11月22日 NHK NEWS
事件の概要
三菱UFJ銀行の発表によれば、貸金庫の管理責任を担う立場にあった行員が、顧客に無断で貸金庫を開扉し、2020年4月から2024年10月までの約4年半の間に、時価10数億円の顧客の資産を窃取していたようですね。
また、被害に遭った顧客は約60人ということですが、貸金庫というサービスの性質もあってか、被害額などは行員の供述によるものとのことなので、被害額などが確定するのはもう少し先になりそうです。
なお、事件が発覚したのは10月31日で、行員は11月13日に懲戒解雇されたようですが、週刊誌の報道によれば、この行員は「ショートでかわいらしい雰囲気の既婚女性」ということです。
まあ、このあたりは週刊誌らしい切り口ですが、事件が公表された11月22日から1週間も経たないうちにこういった報道ができる取材力には驚かされますね。
銀行の対応
また、今回の事件を受け、同行はいくつかの対応をしているようですが、その内容を見ると、「やるべきこと」は「しっかりやっている」という印象を受けますね。
そして、事件を公表する前に行員を懲戒解雇し、事件が報道される頃には「元行員」となるようにしていたところも、大企業ならではの対応だと思います。
また、事件の内容からすれば、「行員による横領事件」とすべきではないかと思いますが、それを「元行員の不祥事」と柔らかく伝えているあたりも、大企業らしい広報だと思います。
こうした事件後の対応に点数をつけるとしたら、100点満点ではないかと思いますね。
なぜ未然に防止できなかったのか
ただ、日頃から「やるべきこと」をしっかりやっていれば、今回のような事件は防止できたと思いますので、貸金庫の「管理ルール」や不正防止の「チェック体制」がどうなっていたのかは気になるところです。
もちろん、同行に問い合わせれば、「厳格な管理ルールを定めている」とか、「定期的なチェック体制がある」といった回答があると思いますが、実際に事件が起こっていますので、何かしら問題があった可能性もあると思います。
まあ、同行によれば、事件を起こした行員は「支店の店頭業務責任者」ということですので、その立場を利用してチェック体制をすり抜けていたのかもしれませんけどね。
自分の勤め先がそんな感じなのですが、「管理職が正義」みたいな社風の組織ですと、管理職の不正が見逃されてしまうこともあると思うので、そのあたりがどうだったのかも気になります。
また、貸金庫では、主鍵を顧客が持ち、副鍵は封緘したのち顧客が割印して銀行が保管することになっているようですが、こんな感じで、しっかり管理されているように見えて、実はさほど機能していないといったこともあるような気がします。
窃取したものの行方
また、被害額が「時価」となっていることや、事件の現場が現金の保管が許されていない貸金庫ということからすると、この行員が窃取したものは有価証券や貴金属類ではないかと思うのですが、それらの行方も気になるところです。
もちろん、今回の事件が金銭目的の犯行でなければ、行員がそのまま保管しているという可能性もあると思いますが、金銭目的以外でこの手の事件を起こすとも思えませんからね。
たぶん、窃取したものの大半は換金されていると思うのですが、そういったところから足がつかないよう、何人かの協力者がいたのではないかという気がしています。
まあ、このあたりについては、今後の警察の捜査によって明らかになると思いますが、いずれにしても、背後関係が全くないということは考えにくいですね。
女性行員による横領事件
また、過去にも女性行員による多額の横領事件がありましたが、以下の2つの事件では、女性行員の背後に男性の存在があったので、もしかしたら、今回の事件もそういった事情があったのかもしれません。
ちなみに、今の時代にこういうことを言うと批判されそうですが、どちらの事件の女性行員も美人だったと言われていて、今回も「かわいらしい雰囲気」ということなので、そのあたりが共通していると感じました。
滋賀銀行9億円横領事件
自分が生まれた頃に起こった横領事件で、自分がこの事件のことを知ったのは随分後になってからなのですが、被害額が9億円(今の貨幣価値で30億円相当)と大きかったこともあり、世間の注目を集めた事件だったようです。
また、事件を起こした女性行員は、真面目で仕事の能力も高い模範的な行員だったそうで、そういった女性が男性のために金を工面し続けたことに対しては、同情する声も多かったようですね。
ちなみに、当時は脱税目的で開設された架空名義の口座がそこそこあったそうで、女性行員は、主にそういった口座から金を着服し、それを自ら開設した架空名義の口座に預金することで営業成績を上げつつ、そこから男性に渡す金を引き出していたようです。
また、当時は証書に誤記があって預金者の印鑑が改めて必要になった場合に、預金者の手間にならないよう、パラフィン紙で印影を転写して済ましていたらしいのですが、女性行員もそれを真似て上司の決裁印を転写し、不正を働いていたようですね。
まあ、事件を起こした女性行員が悪いのは間違いないですが、銀行にもかなりの問題があったということでしょう。1966年11月から1973年2月までと、長期に渡る犯行になったのもそのせいだろうと思います。
三和銀行オンライン詐欺事件
この事件は、女性行員が勤務先のオンライン端末を不正に操作して起こした横領事件で、被害額は1億8,000万円でしたが、そのうち引き出せたのは1億3,000万円で、全額を男性に渡していたそうです。
ただ、引出額が高額だったことで銀行側が現金を用意できず、1億3,000万円のうちの8,000万円は小切手で支払われたそうなので、実質的な被害額は、現金で引き出された5,000万円だったかもしれません。
また、事件が起きたのは1981年3月25日でしたが、給与振込日と決算期が重なるこの日が一年のうちで最も入出金のチェックが甘くなるということで、この日が犯行日になったようです。
まあ、そういったことも含め、銀行員だから出来た犯罪だったのは間違いないでしょうね。